「空気が読めない」は、克服できます。そしてすべきです。
この記事では、「空気を読む力」を養う方法と、空気が読めないことに関する「人生の弊害」について書いています。
そもそも、「空気が読めない」とはどういうことか
まず、空気を読むという言葉自体がかなり新しいもので、定義が少し曖昧ですよね。
デジタル大辞泉の解説を引用させてもらいましょう。
その場の雰囲気から状況を推察する。特に、その場で自分が何をすべきか、すべきでないかや、相手のして欲しいこと、して欲しくないことを憶測して判断すること。
おおよそ、あなたが想像している意味と一致しているのではないでしょうか。
つまり「空気が読めない」とは、「その場の雰囲気から状況を推察できない」ことを指しています。
では、なぜ「空気が読めない」ことが人生を生きる上で弊害となるのか。順に解説していきますね。
「空気が読めない」をすぐにでも改善すべき理由
「空気が読めない」について軽く考えてる人は、実はかなり多いです。
「ちょっと知人にからかわれるくらいのものだろう」
これが実は大きな間違いで、空気が読めないことは、ごく個人的な人間関係だけでなく、あなたの仕事上の支障になり得ます。
なり得るというか、ほぼ確実に、なります。
ほぼ全員が抱える仕事上の悩み
僕は仕事上、毎年100人以上のビジネスマンやキャリアウーマンとお会いして、「お悩みを聞く」機会があるんです。
[say img=”https://xitosite.com/wp-content/uploads/2018/08/silhouette-895681_640.jpg” name=”ボス” from=”right”]100人って別に普通じゃないか?[/say][say img=”https://xitosite.com/wp-content/uploads/2018/03/man-2612537__340.jpg” name=”Xi藤”]雑談やビジネスではなく、「悩み」の話ですから。少なくはないと思います[/say]
その中には年商30億の会社の経営者や、東大医学部卒のドクターなどもいますが、もちろん中間管理職の方、一般の事務職員の方、派遣職員の方も多くいらっしゃいます。
それらの学歴、経歴、年収、社会的地位など、あらゆる条件が違う人と面談を行う中で、一つだけ、ほとんどの方に共通する話題があります。
それは「人間関係のトラブル」です。
そして、お話を聞いていくと、その人間関係のトラブルの多くは、仕事上のトラブルに発展しています。
「大人なんだから、仕事に私情は持ち込まない。」
なんとなく大義名分があるような、正当性があるようなセリフですが、実際の現場を見てみると、私情を一切挟まずに仕事だけを見ている人間など、まずいません。
人間関係のトラブルと「空気を読む」
面談でトラブルの詳細についてお話しを伺うと、そのほとんどが自分、もしくは他者の「空気の読めなさ」が原因だと思われる話が多いです。
例を出しましょう。
[list class=”li-check li-mainbdr main-c-before”]- A社の担当者がいつまでも見積もりを持ってこない! ⇒「緊急性がある」という状況を読めていない
- 同僚のBさんはいつもホウレンソウがなっていない! ⇒「情報が欲しい」という状況を読めていない
- Cさんが部下に必要以上の叱責をしている ⇒「精神攻撃になっている」という状況を読めていない。
実はこの場合、A~Cさんは、状況が本当に読めていない、つまり「空気が読めていない」ということは少なくて、実際は「読もうとしていない」、もしくは「読んだつもりになっている」ことがほとんどです。
「空気を読む」とはどういうことか
空気を読むとは「状況を推察する事」でした。では、「状況」とはなんでしょうか?
場所? 時間? 参加者の立場や属性?
どれも正解ではありません。
「状況」は、登場人物全員の「感情の流れ」です。
別に場所がどこであるとか、時間が何時であるとか、特定の誰が参加しているかとかは関係がありません。
登場人物の「感情の流れ」が「状況」を作っており、推察するべきなのは登場人物全員の感情の流れです。
つまり、「空気を読む」には、その場にいる人間の感情を読む必要があるということです。
「空気を読む」力を身につける方法
「空気を読む」力を鍛えるには、他者の感情を考える癖をつけるのが、最も手っ取り早く効果的です。
有り体に言えば、「他人の気持ちになって物を考える」ということです。
空気が読めない人に足りない能力
なぜ「空気が読めない」かと言えば、他者の気持ちの「表面」にしか触っていないからです。
「深さ」が足りないんです。
どういうことか、例を出しましょう。
僕が前述の面談時、「他者の気持ちになってものを考える癖をつけましょう」という話をすると、大多数の方が「そんなことは既にやっている!」と反論されます。
これはその方にとって、ウソや言い訳ではありません。
「空気を読めない」方からすれば、既に「考え終わっている」んです。
感情の擦れ違いは、「他人の気持ちを読もうとしない」事により起こっているのではありません。「ものすごく薄く読んでいる」ことが原因です。
先ほどの面談の場面。前提は「悩み相談」ですから、僕はアドバイスを「贈る側」です。
つまりここでは、「耳の痛い話もされるかもしれない」という「想像」が、できていません。
「こっちが最後に喋ったので、今度は向こうから話し始めるだろう」くらいの意識で会話をしてしまっています。
結果、具体的な想定が出来ていないので、突然自分にとって不都合な話をされることで、ハンマーで殴られたような衝撃を覚え、咄嗟の事に上手く感情を整理できなくなってしまうんです。
一方僕の方は、深く相手の感情を想像し、「この話をすれば反発がくる」ということも想像し終えていますから、冷静に話を進めることができます。
具体的な方法論
では実際にどのように足りない力を埋められるのか、という話をしましょう。
僕は面談の時、同様の悩みを持つ方には「読書をしましょう」という話をよくします。
活字の本ならなんでもいいですが、最初は流行の小説なんかがいいかもしれません。
[say img=”https://xitosite.com/wp-content/uploads/2018/08/silhouette-895681_640.jpg” name=”ボス” from=”right”]??教養を身に着けようみたいなことか?[/say][say img=”https://xitosite.com/wp-content/uploads/2018/03/man-2612537__340.jpg” name=”Xi藤”]違います。なんなら最初は漫画でもいいんですよ[/say]そして、その小説を1週間かけて読みます。
1週間というのは単なる目安なので、「随分長いな」と感じられる方はそのまま1週間で、「そんなに早く読めないよ」という方は、1ヶ月かけて読んでください。
ただ一つだけ、普段と読み方を変えて頂きたいのが、「小説の登場人物全員の心情を想像しながら読む」ことです。
主要キャラから脇役キャラまで、全員です。
登場人物全員の、登場シーン時における心情を、その人物になりきって読んでみてください。
普通は、主人公の心情を追うか、全く第三者として作品を観察する、という方が多いのかもしれませんが、それは捨てて。あなたが小説の登場人物になると想像するんです。
5人が登場するシーンでは、あなたは5人の感情を同時に想像しながら読み進めることになります。小説によっては一人十役の場面なども当然ありえるでしょう。
あなたは舞台監督のような立場で、全員分の感情を「作成」していくんです。
もちろん、他者の感情を完璧に理解するのは不可能なので、「あなたが登場人物Aの立場ならどう考えるか」を想像するだけで結構です。
ただし、リアルに想像することが不可欠です。
怪我をしている人物がいればその痛みを想像しながら、ミステリー小説の犯人ならば、罪が暴かれる焦燥を想像しながら、まるで自分が現実にそこにいるように想像して下さい。
リアルでなければ訓練にはなりません。
人物のリアルな感情を想像できるようになり、数をこなして、それが読書時の癖になるようならばこっちのもの。
おそらくあなたは、現実社会で人と会話する時にも、相手の考えを勝手に「想像(想定)」しながら話を進めることができるようになっているはずです。
なぜ全員分やる必要があるのか
一人だけに限定してしまうと、本当にただ自分が特定の人物に成り代わって物語に登場するだけで、「矛盾」が生じないからです。
矛盾が生じないまま物語が終わってしまうと、このトレーニングの効果は半減します。
人と人との「関係」を理解する機会が訪れないからです。
例えば、あなたが「かなり人と違った価値観の元に行動する習性」があったとします。要するに「変わり者」として見なされるような人物だったとします。
その状態で、登場人物全員になりきって物語を進めると、必ずどこかで感情の矛盾が生じるはずです。
それは、「あれ?Aはこういう気持ちのはずなのに、なんでBにこんな事を言うんだ?そしてなんでBはすんなり受け入れているんだ?」というような、疑問をはらんだ矛盾です。
その場合、あなたはまず作品の論理構成を疑うかもしれませんが、実際は「こんな事を言うA」は矛盾していない事がほとんどです。
めちゃくちゃな商業作家も世にいるにはいますが、ほとんどの商業作品は、どんなジャンルのものでも、論理構成が綿密に練られています。
なぜなら、「本」は作者の主張そのものであり、主張を理由なく納得させようと試みるプロの作家は、いないからです。(少し嘘。驚くべきことに、いるにはいる)
ですので、もし「矛盾点がある」とあなたが感じたのなら、9割方「論理に矛盾があるのはあなたの方である」という事です。
そしてこれを繰り返す内に、あなたの中に「この状態なら、Aはこう言うのが“普通”なのか」という「気付き」が生まれます。
ここでの「普通」が本当に正しいかどうかはさておいて、世間的に「論理的である」と認識されるのは作品の中に流れている論理の方です。
つまり「感情を想像しながら行う読書」は、「あなたの論理」と「世間の論理」のズレを、何度も何度も認識し、学習する作業でもあるのです。
ただし、「他者になりかわる」という作業は、最初は異物感や不快感がある事もあります。
そもそもいつもと全く違う読み方をすること自体、かなりの違和感があるでしょう。
「空気が読めない」方は、「他人の感情を自分に取り込む」という作業自体に慣れていないことが多いです。
はっきりと苦痛を感じることもあるかもしれません。というより可能性が高いと思います。
「自分の成長の糧にする為には、異物を飲み込むこともしょうがない。苦しいのは成長痛だ」と思えなければ、続かないかもしれません。
もちろん、決断するのはあなたです。強制は決してしません。
また、あまりに「精神的に負荷がかかりすぎる」と判断された場合も、すぐに中止すべきです。
稀に、「入り込みすぎて毎度戻るのが大変だ」という方もいらっしゃって、そういった方にはいい影響を与えない可能性があります。
方法を1つに限定する理由
単にその場その場のコミュニケーションを円滑にするだけなら、一番簡単な方法があります。
「沈黙」です。
うなずくだけに徹すれば、決して摩擦は生まれません。
全くノーリスクで今すぐ適用できます。でもそれは、問題の根本の解決にはなり得ません。
本当に自分の改善を望むなら、「他者の感情を本気で考える」トレーニングが必要だと思います。
そしてこの「他者の感情を考える」トレーニングに、なぜ「読書」をおすすめするかと言えば、一人で完結できるからです。
実際には、例えば友人との会話の中で、「友人の考えを自分の考えと同時並列的に考える」というトレーニングをするのが、おそらく一番上達が早いです。
しかし、そもそも他者の感情を考えるのに慣れていない方がいきなりそれをやり始めてしまうと、考えるスピードが追いつかず、対応が完全な「コミュ障」のようになってしまいます。
自分の中の変化にすら戸惑いや苦痛が生じるのに、相手の反応まで気にしている余裕はないでしょう。
ハンター×ハンターの話
少し余談ですが、週刊少年ジャンプの連載漫画で、「ハンター×ハンター」という人気作品があります。(ほとんどの方がご存知かもしれませんが。)
この漫画は、多くの読者から、「バトルの迫力に加え、ストーリー性や、心理描写にも非常に優れている」という評価を受けています。
H×Hを知らない妹がアメトーク観てメルエムが死ぬところで泣いたって言ってた…(ノ_・。)
あそこ切ないよね。知らない人でも泣ける作画演出すごい。— ハルコ (@NlJbkYVXX42glvR) 2018年5月26日
ハンターハンター見たけど母の愛偉大すぎて泣いた 早くメルエムたんはコムギと出会って……
— いくじ@A32b (@zknc_) 2013年8月11日
実はこのハンター×ハンター。作者の冨樫先生は、物語を作る上で、登場人物全員の時間軸ごとの全ての行動を設定してから創作しているといいます。
例えば、実際に漫画に今登場しているのはAとB。しかし、それとは別のところで、Cがどこでどのように動いているのか、全て予め設定をしているのです。
一見不必要にも思えるこれらの情報を事前に設定したことが、作品自体の矛盾点を少なくさせ、ストーリーに深みを与えています。
それはなぜかと言えば、「ハンター×ハンター」の中では、”A”も”B”も「生きている」からです。
リアルな時間の流れをそれぞれに設定することで、キャラは「漫画キャラ」という枠を飛び越えて、実在の人物に近い存在感を持っているのです。
例えば「ハンター×ハンター」で主人公がピンチの場面、本当に手に汗を握る緊張が生まれているのは、この影響も大きいと思います。
身近な友人に危機が迫っている感覚になっている方も多いのではないでしょうか。
ただ、これを真似しろという話ではありません。「想像」の難易度や時間効率的にも余りおススメはしません。
ただ「ハンター×ハンター」のように、その場に登場していない人物の現況まで一緒に想像できるようになれば、「他者の感情を取り込む」という「技術」に関しては、ある種完璧と言えるかもしれません。
最後に:「空気が読めない」人に言いたいこと
実は今回紹介した改善方法は、大学生の頃に、僕が実際にとある会社の経営者から指南を受けて、実践した方法です。
つまり、僕も元々は「空気が読めない」人でした。
今は、なんとなくマシにはなっていると思ってはいますが、過去を振り返ると、それはそれは酷かったです。
自分の言いたいことだけを言って、不用意な発言で相手を怒らせるなんてことは日常茶飯事でしたし、皆が協力的に作業する場面でも一人でケータイポチポチして、煙たがられることも多かったと思います。
しかし、上記の方法を大体3ヶ月くらいやってみると、自然と「その場にいる人物」の「考えてることを考える」癖がついていました。(もちろん期間は個人差があると思います。)
それ以降、人とのコミュニケーションに困ることはあまりなかったですし、今も仕事上の人間関係トラブルは少ない方だと思います。
というかトラブルだらけの人間が人事コンサル的なことやるって滑稽過ぎますし。
今回紹介した方法が全員に合うかどうか、確実に保証はできませんし、向いていない方もいるかもしれません。
ただ、少なくとも僕にははっきりと効果があったので、興味がちょっとでも湧いた人は、是非一度試してみてね!
「空気が読めない」は、直せる!(かわいいは、作れる!のテンションで)