昔々、シンデレラと呼ばれている、蹴ったボールの軌道が美しく、心の優しい娘がいました。
彼女は穏やかな日々だけを望んでいましたが、いじわるな継母とその連れ子である姉たちに、そのシュートフォームの美しさを妬まれ、いつも疎まれていました。
「やいシンデレラ!中盤の底でボールを持ったらバックパスしかしないあんたをタダで家においてあげているんだから、この家の家事は全部一人でやっておくのよ!!」
「継母はどうしたのかな?」
家事の些細な失敗もやり玉にあげられ、いつもシンデレラばかりが責められ、罵倒されてしまいます。
シンデレラは自分なりにミスを分析し、
「足が痛い」「2週間前から違和感があった」「乳酸がたまってる状態でやっていた」「狙ったミスなんで」
と、色々と理由は話すのですが、全く聞き入れてはくれません。
優しく気の弱いシンデレラは、失敗の理由を無限に生み出すことはできても、面と向かって姉たちに反抗することはできません。
いつも一人、マスコミを呼んでつぶいていました。
「オレ、キレちゃっていいかな?」
そんなある日、お城で舞踏会が開かれることになり、シンデレラの家にも招待状が届きました。
姉たちは喜び勇んでそれぞれが着飾って出ていくのですが、シンデレラはもちろん連れて行ってはもらえません。
途方にくれたシンデレラは、悲しくなって泣き出してしまいましたが、まずは気分を変える意味で香水を使うことにしました。
しかし、ドレスを準備するあてもなく、行きたくても行けない現実。
それを振り払うかのように一人、マスコミを呼んでつぶやきます。
「舞踏会に行かなくても、選手としての幅は広がる。舞踏会より、エスパニョールの紅白戦の方が激しい。」
その時、シンデレラを見かねた魔法使いのおばあさんが、シンデレラに助け舟を出します。
シンデレラに不思議な魔法をかけ、ユニフォームやスパイクなど、舞踏会に行く為の支度を整えてくれたのです。
ただし、魔法は万能ではありませんでした。魔法使いのおばあさんはシンデレラにこう忠告します。
「午前0時に魔法は解けてしまうので、それまでには必ず帰ってくるんだよ」
「ノーサンクス・オールライト」
無事にお城で開かれる舞踏会に行くことができたシンデレラは、たちまち皆の注目の的になりました。
王子もまたたく間にシンデレラの巧みなボールコントロールに魅了され、後ろにキーパーを置いての一対一に誘って、愛の言葉をささやきました。
「結局は、一対一だよな。」
「オレは違うと思うけど(笑)」
夢のような時間を過ごし、このまま時間が止まって欲しいと願うシンデレラですが、無情にも試合はアディショナルタイムに突入。
シンデレラにはもう時間がありません。
零時の鐘の音に焦ったシンデレラは、帰りの階段を駆け下りる最中、乳酸がたまっている足が痛くて、大事な10番のユニフォームを落としてしまいます。
シンデレラがどこの誰だか聞いていなかった王子は引き止めようとしましたが、シンデレラはあっという間に試合から消えてしまいました。
そして、お屋敷に帰ったシンデレラ。あの夜のことを夢に見ますが、王子が迎えにくる様子はありません。
マスコミを呼んでつぶやきます。
「王子はどうしたのかな?」
その頃王子は、使いの者達にユニフォームを手がかりにシンデレラを捜させていました。
このユニフォームを着て、フリーキックを決めた女性と結婚するというのです。
町のあらゆる代表選手にユニフォームを着させようと使いの者達が回りましたが、シンデレラの落とした「10」と書かれたユニフォームは、スポンサーの意向によってシンデレラ以外の誰も着ること事ができませんでした。
そしていよいよ、王子達はシンデレラの家までやってきました。
待ちに待った王子の登場に、シンデレラの心も昂ぶります。
「いいことじゃん。それ系で。」
しかし、姉二人も黙ってはいられません。我先にとユニフォームを着ようと息巻いています。
「正解じゃない。」
シンデレラが岡崎に予言した通り、姉二人もスポンサーの意向でユニフォームを着ることはできません。
次に試させてもらおうと順番を待っていたシンデレラに、突然金髪の異端児であるアイツ(継母)が「ここはオレでしょう!」と告げ、強引にフリーキックの権利を要求してきました。
「チッ」とだけ吐き捨て、シンデレラはそのまま無視してフリーキックを敢行。
しかし、ギリギリのところでGKフォルムの牙城は打ち崩せず、コーナーキックへと逃げられます。
肩を落とすシンデレラ。
しかし結果は出ずとも、スポンサーの意向どおりにシンデレラは日本代表に選出され、「10番」のユニフォームを着て南アフリカW杯に参戦し、王子(トルシエ)といつまでも幸せに暮らしました。
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しかも40歳のいまだJ1リーグで現役。ヤバイ。