米津玄師のおすすめアルバムと、最高の“アルバム曲”を紹介したい。

「“好きなアルバムはなんですか?”」

実は。というか薄々気づいている方も多いかとは思うが、米津玄師のアルバムには、基本的にハズレ曲がない。

ないのだ。

理由もある。

単純に言うと、米津玄師自身が、『全ての楽曲を「リード曲」と同等のクオリティを持つものにしたい』と考えているからである。

一般的なアーティストが普段どれだけ「捨て曲」を意識しているかは正確にわからないが、
米津玄師はとにかく。

全ての曲を”美しく”したい。

自分は曲を作るにあたって全部ポップな曲にしたいし、どれがリード曲という立ち位置になっても差し支えないような強度を持ったものを作ろうと思っているので。

ー音楽ナタリー インタビュー

つまり米津玄師のアルバムでは、全ての曲が主役級の存在感を持つことになる。

この記事では、そんな「米津アルバム」の良さを知ってもらう為に、おすすめアルバムと、アルバム収録曲を1stから4thまで一挙紹介する。

基本的にシングルカットされているものや、知名度が高い(と思われる)曲は除いているので、「最近米津玄師にハマった」という方にとっては、新たな発見があるかもしれない。

既にかなりの「米津玄師ファンだ」という方は、「あー。お前はそっちね。アタイはこっちだけど。」というスタンスで読んで頂ければと思う。

※一部ツールの動作が不安定なので、「これ聴けない!」という方は、クロスフェードを参照して頂ければ幸いです。曲順も記載しておりますので。申し訳ない。且つ、音量注意です。

オリジナル信仰への明確な“反逆”「BOOTLEG」

そもそもBOOTLEGとはどういう意味か?

BOOTLEGとは、日本語で「海賊版」という意味をもつ。海賊版の定義についてさらに詳しく言うと、「著作権者の許可を得ずに作成された作品」を指す。

つまりこのアルバムが表現したいことは、「過剰なオリジナリティ信仰への反抗」だ。

彼自身、BOOTLEGは「自分の中でオマージュのアルバムだと思っている」と語る。

彼が目指す美しく、普遍的な音楽。

彼にとって、「普遍的な音楽」の制作過程において、過去のミュージックシーンを彩ってきた名盤からインスパイアを受けることは、恥ずかしいことでもなんでもない。

美しいものを作ることができれば、過程なんてどうでもいい、自分が歌っている必要すらない、と米津玄師は考えている。

そんな彼の、ある意味で音楽制作の原風景とも言える作品。

とにかくここまで”ハズレ曲”がないアルバムは珍しい。「全曲リード曲」で異論はない、最高アルバム。最高アルバム。

ここまで「美しい音」が作り出せるなら、その他の議論は確かにつまらない野次でしかない。

「BOOTLEG」おすすめ曲ピックアップ

1.飛燕

ごくごく個人的な感想を言うと、聴いてるとなぜかワクワクしてくる。

新しい冒険の始まりだっ、という感じ。

ちなみに歌詞の世界観は、「風の谷のナウシカ」への「オマージュ」だと言う。混沌としていて、鬱屈とした世界からの大脱出。

自分を信じて、新しい世界へ飛び立つことを、自分自身が客観的に後押ししているかの様な言葉が並ぶ。

12.Nighthawks

Nighthawksとは、夜更かしをする人。つまり、彼自身のこと、もっと言えば学生時代の彼自身を歌った曲になっている。全体的に機械的な音を駆使したアルバムの中では珍しく、ストレートなバンドサウンドが特徴。

この楽曲は、学生時代に米津玄師自身が”よく聴いていた音楽”のオマージュによって生まれている。

つまり、BUMP OF CHICKENやRADWIMPSなどの楽曲イメージを踏襲した作品となっている。全14曲の中でも、ピースサインに次ぐ「メジャー感」がある楽曲に仕上がっている。

誰にでも聴きやすい、「米津玄師流」全方位型ロックチューン。

「BOOTLEG」クロスフェード

最高アルバム。

今いる場所からその先へ、“音楽”で引っ張っていく「Bremen」

「ブレーメンの音楽隊」が主題になっているアルバム。

今いる場所に疲れた動物達が、そこから脱走して、「ブレーメン」を目指すという世界観が、彼自身のもつ思想と絶妙にリンクしたことから名付けられた。

「ブレーメンの音楽隊」に倣って、音楽でみんなを引っ張っていく。「人を惹き付ける音楽を作る」という大きなテーマが存在する。

米津玄師が「どこへも行けない」と歌詞で連呼しているのは、「どこかへ行きたい」からなのである。

「今自分を取り巻く環境からの脱出、前へ進むことの重要性」は、米津玄師が作り出す全ての音楽の根底に流れているものだ。

一つのアルバムで表現する、光と影。

そしてもう一つ、このアルバムでは、曲と曲同士が表裏一体の様な側面を持っている。それは歌詞であったり音であったり。

陰と陽、ポジティブとネガティブのような両面が混在する作品となっており、これがアルバム全体にある種の立体感と、物語としての統一感を感じさせてくれている。

「Bremen」おすすめ曲ピックアップ

6.ウィルオウィスプ

アルバムタイトルを決定付ける決め手となった楽曲。

ウィルオウィスプとは、青白い光を放ち浮遊する火の玉、日本語で表すならば「鬼火」を指す。

ふらふらと揺らめくようなメロディに、どこか懐かしいゲームミュージックのような音作りは、「主人公達の壮大な冒険の始まり」を想起させる。

エレクトロな音を多用する米津曲の中でも、少し異彩を放つ楽曲。

14.Blue Jasmine

どことなく薄暗い物悲しいストーリーが続くBremenの世界で、最後に登場する「なんでもないラブソング」。

重厚なドラム音が心地よく響く、聴いていて気持ちがほんわかするような音作りが印象的。

米津玄師曰く、「半径5メートル内にある小さな幸せに気付いてもらうための楽曲」。

青春時代を思い起こさせるような、どこか懐かしい曲調。

リア充のやつらはこの曲、好きなんだろうなあ・・・!

「Bremen」クロスフェード

リア充のやつらめ・・・!

自身の音楽の進化と変化、“所属カテゴリ”の移り変わりに「YANKEE」

タイトルに込められた意味とは、「移民」。

つまり、米津玄師自身がボーカロイドからメジャーシーンへ移り変わっていくことを表している。

とにかく音においても言葉においても、リスナーにとってわかりやすい楽曲を作るというテーマを元に制作されたアルバム。

誰でも手に取れるような音楽を作りたいという意思がその根底にあり、前作「diorama」に比べ、「ポップス」を強く意識した音作りへと「移行」していっている。

「呪い」という名の誰もが抱える葛藤

そして、アルバムのもう一つのテーマは、多くの人が抱える「生活環境への適応に関するの葛藤」への共感。

自分の居場所を感じられず、居心地の悪い思いを強いられている人たち。不器用で、ネガティブで、上手く「普通」にできない人たちに、「それでもいいんだ」というメッセージを強く発信している。

そしてその「普通」にできない人たちの筆頭は、他の誰でもない、米津玄師自身なのである。

「YANKEE」おすすめ曲ピックアップ

9.しとど晴天大迷惑

疾走感のあるBPMと、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような多種多様な「音」、そしてギターサウンドが響き渡る軽快なリズムが特徴。

「声を出せぱっぱらぱ!」のあとのフェイク(?)がシビれる。アッハアッハ言うてる。

本当に何回もそこだけ聴いてしまうレベル。

多分この曲も「Flamingo」みたいにゲラゲラ笑いながら作ってると思う。むしろ、作っていて欲しい。

10.眼福

アコースティックギターのみで構成された、切ないメロディが印象的な弾き語り曲。

あらゆる機械音が背後で鳴っている「MAD HEAD LOVE」や「ポッピンアパシー」と同じ作曲者とは、到底思えない。

米津玄師というアーティストの、とてつもない楽曲の振れ幅を味わえる。

聴いていると、物語の主人公にどんどんと感情移入して胸が熱くなる。

とにかくストレートに心に響く名曲。

「YANKEE」クロスフェード

とにかく絵が上手いというかキャラデザが上手すぎる。

それぞれの曲が、一つの街として存在する「diorama」

「ハチ」→「米津玄師」

米津玄師がリリースした最初のアルバム。

収録された14曲の楽曲たちは、独立したものとして存在しつつも、それぞれがお互い作用しあって、一つの『街』を形成している。

それはまるで、立体的な『ジオラマ』のように。

ボーカロイドの世界から出て、初めて「米津玄師」をさらけ出した言わば処女作だが、曲の構成にはまだ「ハチ」の名残が色濃く残っている印象。

アルバムを通して全体的にアルペジオを多用し、ロマンチックな音作りが特徴的。

「diorama」おすすめ曲ピックアップ

10.Black Sheep

Black Sheepとは、日本語で「厄介者」の意。

「周りから見た自分は厄介者である」という、米津玄師の根底に流れる葛藤が映し出された楽曲。

まるで迷いの森に迷い込んだような、幻想的なメロディが薄暗く響く、独特の世界観が形作られている。歌詞もネガティブな表現が多い。

中でも僕が個人的に好きなのが90年代っぽいイントロのメロディ。

後は初期米津らしく、とにかく色んな音がそこかしこで鳴ってる。

7.vivi

この曲は、「diorama」制作時の米津玄師の内面世界を、一番顕著に表している楽曲であるとのこと。

どこか優しげで悲しげで、ドラマチックなメロディーラインが特徴。

お互いに悪意がなくても、どこかですれ違い、わかりあえない。米津玄師自身が思う、切ない人間関係に関する本音が垣間見える作品。

さよならだけが 僕らの愛だ

控えめに言っても切なすぎる。

「diorama」クロスフェード

最新アルバムが最も「おすすめ」である、稀有なアーティスト「米津玄師」。

結果から言うと、おすすめできる順は、リリースが後の順になった。

おすすめアルバムを考えるとき、最新のアルバムが一番良いと思えるアーティストは、実は案外少ないのではないかと思う。それは、聴いている当時の思い出だったり、懐古のような気持ちが少なからずあるからかもしれない。

しかし米津玄師に限っては、最新アルバムを推すことはある意味必然だろう。

なぜなら米津玄師は、まさしく「進化し続けるアーティスト」だからである。

”オリジナル”よりも普遍性を好み、この世のあらゆる芸術性を取り込んで、成長し続けるモンスターなのだ。

対象は、「音楽」だけにとどまらない。漫画やアニメ、おとぎ話から絵画や美術品など、あらゆるこの世の芸術は、言わば彼の”餌”だ。

メガヒットを記録した「Lemon」、「Flamingo」、「TEENAGERIOT」などを含む5thアルバムは、おそらく「BOOTLEG」をも凌ぐ傑作アルバムになるだろう。

米津玄師本人が語る、米津玄師の「第2章」。

“Lemon”でいわゆる自分と真逆のところの人にまで届くようなものが作れたのは、自分の目標を1個達成できた瞬間だったんです。そういう意味でも、2018年は、自分の人生の第1章・完みたいなところはあります

rockin’on.comインタビューより引用

新しくリリースされるアルバムもまた、彼の「第2章」の開幕を、きっと煌びやかに彩ってくれるはずだ。

新章を歩き始めた米津玄師が作り出す、新しく、普遍的な”美しさ”。

これからも、誰も、目が離せない。

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